西加奈子『あおい』
小学館文庫特有のツヤツヤした紙と、くっきりした黒い文字が好きだ。
今回は西加奈子さんのあおいを読んだ。
西さんのデビュー作でもあるこの本は、最初から強烈に光っている。
この人は本当にすごいなと。
怯えも見られない素直な表現で、日常を描いている。
それはどきりとするような突きつけ方ではなくて、するりと柔らかく心に入り込む。
冒頭から持って行かれてしまうのだ。
一番衝撃を受けたのは同作者の「きいろいゾウ」だが、今回も負けずに一瞬で世界観に引き込まれる冒頭だった。
大阪弁で繰り広げられる登場人物の会話は、方言の強さを感じる。
大阪弁ってとても強いと思う。
シリアスな場面でも、大阪弁で会話をすることで心に隙間が生まれる。
大事なことを話してるのは変わりないのに、その方言の柔らかさによって雰囲気が緩み、とたんに話しやすくなる。
大阪弁はそれが一番強いと思う。
性的な描写も、西さんが描けばアフリカの大地にいるような、当たり前で全くいやらしさの感じられないものになる。
今まで出会ってきた作家さんで、一番気持ちの良い描き方をすると思う。
「あおい」は3編からなる短編小説である。
それぞれとても素敵で、デビュー作らしく、最近の西さんとはまた違った風味を味わうことができる。
ぜひおすすめです!